*シンデレラをTFでやってみた*




ある日スタースクリーム改めスタデレラという、何とも口数が多く反抗ばかりしてくる、まぁ顔だけはよく出来た子がいました。
何かあの例のシンデレラとは酷く違うのは仕方がありません(笑
スタデレラは、継母のメガトロンとその連れ子のスカイワープ・サンダークラッカーに毎日からかわられたりと色々とされてきました。
しかしスタデレラも下剋上だやら俺がリーダーだやらと言っていて、もうそりゃあ皆苦労しました。

あるとき、この町にあるお城で舞踏会が開かれる事をスタデレラは知り、メガ母に自分も行きたいと言いました。
「この愚か者目が!貴様など連れて行っても恥だ、恥!いいか、お前はずっとここにいるがいい!」
「ちょ、そりゃネェぜ…!お、おい!!」
メガ母はスタデレラの部屋に鍵をかけて出て行ってしまいました。
「くそぉ、どうすりゃあいいんだ・・・・・・」


部屋に閉じ込められたスタデレラは、一体どうすればいいかと頭をひねりました。
するとこういうときに凄くいい意味で働く頭は感覚神経に関係なく勝手に動きました。
気が付いたときには、鍵をお得意ビームで壊し脱出に成功、おめでとう!!
しかし出れたことはいいですが、肝心のダンスに行く為の用意がひとつもありません。
スタデレらは悩み悩んで、結局頭をかかえてしまいました。

そのとき、何とスタデレラの目の前に人が現れました。
思わずスタデレラは吃驚し銃を構えると、そこには何とも奇抜な格好をした大柄な奴がいました。
「お前・・・誰だっ、俺に何の用だ!」
「五月蠅イ、俺ハ魔法使イ。オ前ノ手助ケシテヤル」
酷く聞き取りにくい声で分かった事は、この目の前の奴が魔法使いという事、そして自分を助けてくれる事でした。
最初はどうしようか迷っていましたが今のこの状況。自分だけではどうすることもできません。
「・・・・・・どうやって、俺様を助ける気だ」
重たく口を開くと、魔法使い?は胸から鳥のようなカセットを取り出し、何かを命令してその鳥を羽ばたかせました。
「・・・何したんだ?」
そう聴いた瞬間、先ほどの鳥が戻ってきたと思ったらなんときらびやかなドレスをくわえていました。それにはスタデレラも驚きです。
「コレヲ、着ルンダ」
「いいのかっ?」
「後ハ靴二飾リダナ・・・」
そういうと再び鳥カセットが羽ばたき、先ほどのように一瞬にして戻り、口ばしにキラキラ輝く物をくわえて舞い降りてくるのであった。
これは魔法じゃねぇよなぁ。という突っ込みは飲み込み、素直にソレを身に着けていきました。
するとスタデレラは見違えるように綺麗になりました。
喋らなければ素敵なのです(笑顔

「有難うな魔法使い!おかげで舞踏会に行けるぜ」
「ソウダナ、ケレド12時ニハ戻ッテ来イ。魔法、切レル」
「え、これ消えるのかよ!持ってきたんじゃねぇのか!?」
「魔法。過ギルト消える、破レル?ン?」
「疑問かよっ!しかも破れんのかよ!!まあ、でも12時だろ?
 そんころにゃあ戻るぜ、サンキューだったな。また会おうぜ魔法使い」

そう軽く御礼を言うとスタデレラは戦闘機にトランスフォームしはるか上空に飛び立ちました。
その時ばかりは、あんなきらびやかな戦闘機はいないだろうと自称魔法使いは溜息をついて空を見上げました。










舞踏会。
心弾む音楽、華麗できらびやかな人がふわりと甘い香りを纏わせ広いホールを踊る様子。
それをじっと見つめるある人影に声をかけたのは王のコンボイであった。
「どうした、スカイファイアー。お前も下にいって踊らないのか?」
「私にはああいう場所は似合わない」
「しかし、これはお前の為に開かれたパーティーだ」
此処の王子であるスカイファイアーには好きな人が居なかった。否、見つからないのだ。
どれほど美しく纏い、自分につかずいてこようとも何も思わない。
唯、こうして眺めている方が楽しいのだ。
コンボイはそんな彼の気持ちを悟りつつ、少しだけためた息を吐き出した。
「スカイファイアー。別に相手を見つけろなんていっているつもりはない。
 せめて息抜き程度に楽しんではくれないか?」
「王・・・・・・。分かりました、少しだけ、下に行ってみます」
そう告げてスカイファイアー王子は明かりが溢れる舞踏会へと足を運びに行った。

 

 

その頃。ちらりと城に飾られた時計の時刻を見ると、まだ12時にはならない。
急いで駆けつけてきたジェット機は見る間に姿を変え、美しい姿を纏った姿へと戻した。
ゆっくりと、階段を踏みしめる。横に居た赤い警備員が入り口を先導し、なれない行為に表情も身体も強張らせた。
そして、目の前の光景に息を呑む。
きらきら輝くシャンデリアや人々。壮大な音楽に合わせ、手をとり踊りあう姿。

自分は、これをやりにきたのか?冗談じゃない。

スタデレラは予想以外の状況に舌打ちをした。
こう、もっと自分だけが目立つ。自分こそが最高だと思ってきたのに。
どこまでもが眩しくては何の意味もなさない。
しかも、知っている人は誰も居ない。
スタデレラはどうしていいか分からずただその場に立ち尽くした。








がやがやとした人混みに足を運んでいくと、徐々に自分の存在に気付いてくるもの達がひそひそと声を交し合う。
そして知らない女性が歩み寄り、酷く近くでボディに触れたり、撫でるように視線を這わせてくる。
やはりこなければ良かったと思いつつ丁重にお断りしながら誰も居ない端の庭へと足を運んだ。

すると、薄暗い月闇が照らす噴水に腰掛ける誰かの姿が見えた。
ちゃんとドレスを纏っている。どうかしたのかと声をかけると、その表情に少しだけ驚いた色が見えた。
「あの、気分でも悪いのですか?」
「……違ぇよ。何でもねぇ」
ぷいっと、そっぽを向いて口を尖らせる姿にスカイファイアーは焦った。
「え・・・あの、その。・・・・・・名前、そう。名前は?」
「・・・・・・スタースクリームだ。周りからはスタデレラって、と呼ばれているがな」
「そうか、スタデレラか。私はスカイファイアーだ。宜しく」
すっと手を差し伸べると、少し驚いた表情を見せたが不器用にその手を握り返してくれた。
「お前、踊んないのか?」
「気にの方こそ。そんな綺麗な身なりをしているのに」
「してねぇ・・・・・周りはもっと綺麗だ」
我儘なように口を尖らせ反抗すると、彼は首をかしげた。
「私から見れば、君が一番似合っているが?」
そう告げると、スタデレラは顔を伏せてしまい、スカイファイアーはどうしたのか?と問いただす。
多分彼はどれ程恥ずかしい事を言っているのかわからないのだろう。

急に突然腕をとられ、スカイファイアーは明るいホールへと導かれる。
「スタデレラッ・・・!?」
「踊るんだろう!しょうがないから俺様と踊らせてやる!!」
「・・・・・・ははっ。有難う、スタデレラ」

そう笑うと、彼は小さく唇を噛み、手を引くのであった。



わぁっと歓声が聞こえたのはきっと、ホールのど真ん中にズカズカとやってきた二人がいたからと。
それが此処の王子スカイファイアーと、今まで見たことのない者が一緒に手を取り合っていたからだろう。
そんな事気にもせず、スタデレラは流れる音楽に合わせようと足を動かす。
しかしそのテンポはおぼつかない。
「スタデレラ」
「ぇ・・・お、おう?」
スカイファイアーはスタデレラの手をとり、腰に手をまわした。
それだけで優雅な曲に合う見事な踊りが出来上がる。
「凄いなお前」
「そうかい?」
そうしてゆっくりと踊りに身を任せていく。
スタデレラはそんな時間が何故かもどかしくて、見上げた瞳で目の前に居るスカイファイアーを見つめた。



そのときである。

ボーン、と城中に大きな鐘が鳴り響く。
12時を知らす、壮大な音。

「やばいっ・・・!急がねぇとっ!!」
「スタデレラ!?」
スタデレラは12時に魔法が解けてしまうことを思い出し、大きな腕から身を離した。
人混みを掻き分け、ずらりと並ぶ階段をかけていく。
その瞬間、カツンという音が響き気が付けば履いていた靴が片方落ちている。
しかし、拾っている暇はない。
駄目だ、駄目なんだ。


「スタデレラッ!!」
後ろから名前を呼ぶ声が聞こえる。どれほど振り向きたかっただろう。
「トランスフォーム!」
夜空に響く声と共に、スタデレラは空へと飛び立った。

「・・・・・・スタデレラ」
スカイファイアーは落とされた透明なヒールを持ち上げ、星を飾る空を見つめた。








小さな個室の中。窓から眺める景色には緑の葉をつけた枝。小鳥の姿。
ソレを見て、スタデレラはらしくない溜息をついた。
あの日上空を飛んでいるうちにみるみる飾りは取れて、元の姿に戻っていた。
今でも覚えている、あのスカイファイアーの顔を。
忘れるはずがない、あのぬくもりはきっちりと残っている。
彼は何なのだろうか?誰なのだろう?ソレばかり頭を掠める。
気が付けばいつものようにメガ母にこっぴどく怒られ、馬鹿ジェットロン2体に酷くからかわれるのだ。
いつもの日常。
茶飯事。

そして何気なく窓から外を眺めていると、家に近づく立派な馬車。
「何だあれ・・・・・・って、おい!?」
思わずスタデレラは声を上げた。
馬車から出てきたのは、ずっと思いに残っていた彼。
スカイファイアーの姿だったからだ。
今直ぐ行ってやろうと扉を叩くも、鍵を閉められ出れず、外も鉄格子で囲まれ逃げ出せはしない。
どうすれば、どうすれば気付いてもらえる?
そう悩み頭を抱えているそのときであった。鉄格子のほんの少しの隙間から、こつこつと小突く音が聞こえる。
「お前、いつの日のカセット鳥じゃねぇか!!」
近寄ると、その口ばしには鍵が一つ。
「これを、俺に?」
こくりと丁寧に頷き、鍵を手に取ると鳥は何処かへ飛び立っていった。
行くしかない。

スタデレラは重い扉に鍵を差し込んだ。











「まぁ此方に座ってくれ、王子殿」
「え、いや。お構いなく・・・・・・」

現・メガ母の家。
勿論そこには継母のメガトロンと連れ子のスカイワープ、サンダークラッカー。
そして訪問者のスカイファイアーと連れ人のバンブルであった。
「ところで、ここに何の用で?王子」
「それは」
「実は王子、探し人が居ましてね?おいらたちで探しているんですよ♪」
「ふむ、そうか」
スカイファイアーは端に居る2人を見つめた。
酷く似たその容姿だが、彼に似ているようで似ていない。
「とりあえず、どうやって探しておるのだ」
「この靴を履けたものがそうらしいですよ、ね。王子?」
「あ、あぁ」
しかしスカイファイアーは困った。
もしこの2人が履いたらそれが自分の探していた人だろうか?それでいいのだろうかと。
「じゃあ俺が先に履かせて貰うぜ」
そういってサンダークラッカーが履こうとしたその時。

 

「おいてめぇー!!人様の靴履くんじゃねぇ、このまぬけが!!」
「スタデレラっ!貴様、どうやって・・・」

スタデレラ。

その名前を聞いてスカイファイアーはゆっくりと歩み寄る。
「へん、この俺様が簡単に捕まるとでも・・・・・・お前・・・」
「スタデレラ、探していた」
「・・・お前」
そういって手をつかみ合おうとしたとき、横から大きく声が上がった。
「おい待て!俺たちはまだはいてねぇぞ。それじゃあ探し人は決定しないな」
「俺がそうなんだよ。うぬぼれるな弱者が」
「お前がだろう?知っているか、俺たちは同型だ。はけないわけがない」

確かに、それはそうだ。
しかし、しかしである。納得いかない。
「ならお前ら履いてみろっ!」
「スタデレラ・・・」
「いいのか?じゃあよいしょっとー。って、な、何でだ、履けねぇっ;」
「う、嘘だろ。…マジだ」
「ぇ」
まさかの展開にスタデレラも驚きを隠せない。
恐る恐る自分も足を通すと。見事に靴がフィットする。
「本当かよ・・・・・・」
そういって顔をあげると、あのときのように彼が微笑んでいた。そして又、照れたように唇を噛む。

「スタデレラ、君が本当に居てくれた」
「・・・・・・あぁ」
「これからも、いてくれるかい?」
「・・・・・あぁ」

多分彼は気付いていないだろうけれど、自分の気持ちはきっと彼より高鳴っているだろう。

 


後日、上空を多角飛ぶ2機と。
ソレを見守る王と連れ子。
そしてあの魔法使いがその青空をもう一度見上げたらしい。



 

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