深く、深く堕ちているのか。
それとも、ただ虚空を彷徨っているのか。
思考が浮ついたままで、まるで眠りの中にいるようだった。
下げたままのバイザーをゆっくりと上に上げ、目を閉じた。
蒼 黒 白 碧
一瞬だけ見た、自分のいる世界は。
そんな色の中に、自分はいる。
・・・・・・。
そうか、自分は今。
ここにいるのか。
何もない、無の世界。右も左も、上も下もない空白の全て。
覚えているのは
ほんの少しだけの痛みと。
それと。
貴方の事で。
『いい星じゃんかよ』
そんな星に、やってきて。
少しだけ、生きた証を示した。
覚えている。
あの戦地の中でもあの空は真っ青で、雲が流れていて。
走る道の横には、小さな花が咲いていた。
黄色い、小さな、いっぱいに咲く・・・。
そして
あのときやっと出会えた星空の下。
そこには、待ちわびたお前がいて。想いがあって。
あの後、お前は無事だったのだろうか?
どれ程心配したか、はっきりと覚えている。
ただ、それだけ。
たった少しの焼きもちだけれど
星を皆殺しにして。
お前だけ、そこにいてほしかった。
そんな我儘が、浮つく思考に反響する。
まるで縛られているかのように身体は動かなかった。
けれどその感覚に、何故か安心した。
このまま、どこへいくのだろう?どこへいけばいいのだろうか。
こんな風に、お前もいたのか?未知の星に。
この、世界に。
終わりなく深く深く
何処まで続くか分からない場所に自分はいるのであろう。
そこには、勿論お前はいない。
いてはいけないのだ。
それでも
祈るように、少しだけ手をのばした。
揺らめく世界に
冷たく重い世界から
今
まだ届くのならば
『バンブルビー』
世界が、終わる。
夢が、途絶える。
意識が、消える。
それでも
伸ばそうと 届こうと 少しでもいいから
幸せでいてくれるならそれでいい。
祈るような想いが 叶うならば
それでいい。
だから
だから
お前は
俺を消してくれよ
それならば、星さえも要らない。
お前がそこにいるなら
星なんてなくても
この揺らめく世界には
届かないから。
END
BGM/cocco「どしゃ降り夜空」